DESIGN HOUSE

English House A

私の家はイギリスのリバプールにある。リバプールは現在大学の町だが、隣の町マンチェスターが18世紀中ごろから布を織る機械の発明やたばこ産業等が盛んになり発展した際に、リバプールの港からたくさんの貿易船が出入航して奴隷産業で栄えた都市だった。

また世界的に有名なビートルズが生まれた街でも知られている。 私の家はビクトリアンの時代に作られたセフトンパークという広大な公園の近くにあるが、その公園を取り巻くように建てられた大きな家々は、自分たちの富を競い合うかのように貿易商たちが贅沢の限りを尽くしてこぞって建てたものばかりである。

今では微かに面影が残るだけで、学生たちが部屋をシュアしていたり、空き家になっているので窓ガラスが割れたままだったりとちょっとうらぶれた感じがする。それぞれの窓には住人たちが選んだ色違いの安っぽいカーテンが掛けられ、それぞれに違った照明が見える。
時々私たちはそのセフトンパークの外周をジョギングやサイクリングをしたり、またピクニックをしたりしたが、野外コンサートがあるとき以外は静かで人も少ない。
公園の中にはビクトリアンデザインのドーム型の巨大なガラスのコンサバトリー(植物園・温室)だった建物があるが、東屋と共に廃屋化している。 川があり、湖があり、特に夏と秋が美しいが、ビクトリアン時代の金持ちたちが特権階級の象徴として作り上げた公園は、今でも手入れが行き届き、地方政府がしっかり管理している。
奴隷産業で私腹を肥やしロングドレスに身を包み、日傘を差して犬をお供に散歩している婦人に会いそうな小道や木陰を見つけるたびに、今がその時代で無く良かったと思うのである。 さて、そのセフトンパークへの入り口にあるラークレーンという場所は私の一番好きな場所である。ちいさな店が次々に建ち並び、なんでも素敵に見えてしまうのである。
古本屋、骨董品屋、お花屋、八百屋、日用雑貨店、カフェ、パン屋さん、パブ、レストラン、そして、私が通っていた陶芸教室。町の喧騒から外れひっそりと落ち着いた雰囲気の中で人々の生活を支えているように静かに息付いている感じがするのである。どの店にも私の小さな出来事や思い出が詰まっている。 我が家からラークレーンまでは自転車で3分。我が家のあるベルグレーブロードから大通りを渡ると、もう小人の世界に来たようなラークレーンである。 ラークレーンの商店街の裏側には、庭の大きな家々が放射線状に作られた道を挟んでそれぞれが個性的な庭つくりの中に建っている。ゲートから玄関までのアプローチのデザインはどの家も興味深い。また家のデザインもいろいろだ。中には斬新でモダンなデザインもあったりするので驚かされるのだが、それは本当に珍しい。

ほとんどの屋根は天然のスレートで外壁は石を吹き付けた壁材やブリックでできている。どの家も階段の手すりやドアや壁の色に個性を持たせている。お友達の家の、ダイニングルームの壁はオレンジ色だが、白の窓枠と組子が映えて見える。壁に飾られてアイアンの時計やキャンドルスタンドがその存在感を出している。ワインレッドの壁色にしているお友達も居る。濃い色に白の窓枠と組子はとっても上品で素敵に仕上がる。壁が無地なのでカーテンでいろいろ遊んでいる人が多いが、家創りに対する意識は非常に高く、みんなかなりこだわっている。そして自慢になっているようだ。 我が家には、縦長の大きなベイウインドーがフロントのシッティングルーム(リビングルーム)にあり、石を積み重ねて作られた壁の厚みは、40センチ以上はある。
我が家の階段の手摺りバーは白だが、格子は水仙色で玄関ホールを明るく柔らかな雰囲気にしている。ホールの床と階段の踏み面の絨毯は淡いブルーで、とても清潔感が出ている。半日仕事で終わらせたお気に入りの玄関ホールである。
キッチンは白の大きなテラコッタタイルの床に壁は水仙色・巾木と廻縁は白、天井は板張りで、勝手口ドアはステンドが入ったオークの無垢のドアで、ドア枠は白である。
15年以上前からビビッドな色使いがフランスから入ってきているので、イギリスの暗い空とは対照的で、家の中では明るい気持ちになれるのである。